【理事取材特集②】井手憲文理事 インタビュー
井手憲文
一般社団法人ツーリストシップ理事
2012年から13年まで観光庁長官を務め、
現在は成田空港高速鉄道株式会社 代表取締役社長。
井手理事からの一言
旅先で「ありがとう」と言ってみよう!
夏は子供が小さい頃から軽井沢で過ごし、年末は家族で温泉地に行っていましたが、コロナになってからは出張を含めた旅行の機会が減りました。計画は立てずに旅行をすることが多いです。
2012年から13年まで観光庁長官を務めていましたが、期間が東日本大震災直後だったということもあり、東北の観光復興に力を入れていました。2012年に催された赤坂御苑の園遊会では大変光栄なことに当時の天皇陛下から東北の観光について励ましのお言葉をいただき、感激したことを覚えています。
一方で、観光庁長官としてインバウンドを増やすためのビザの緩和や免除にも力を入れていました。ビザ担当の外務省の領事局長や法務省入国管理局長・警察幹部と直接交渉し、ASEANの当初の加盟国のビザ緩和、免除を達成することができました。2013年にインバウンドが初めて1,000万人を越えました。21世紀になってから悲願だった目標に到達しました。しかし、インバウンドばかりでは双方向になりません。実は、インバウンドの反対を意味する「アウトバウンド」は私が昭和の終わりごろ課長補佐のときに作った言葉なんです。当時の日本は貿易黒字が大きく、多くの国々から非難されていた時代でした。そこで、旅行収支の赤字を増やすためにも「日本人が外国に行ってお金を使えば良いんじゃないか」と数々の政策を提案、実現しました。
現在は「交通」に関わる仕事をしていますが、旅行をする際には必要不可欠な手段ですよね。でも、新幹線など便利な交通手段が普及していますが、交通はある程度不便な方が良いのではないかと思います。いっそのこと、旅行先でも歩きましょう。(笑) 時間をかけて行くからこそ価値があると思います。さらに、行くからにはリラックスするだけではなく、旅先のことを勉強してみてはどうでしょうか。観光を広く捉え、もっと楽しい気持ちになってみませんか?
特に、訪問先ではサービスを提供してくれる人たちに感謝の気持ちを持ち、「ありがとう」というように私は意識しています。相手が喜ぶだけでなく、こちらもとても楽しい気持ちになるんです。簡単なツーリストシップを発揮することで、観光をずっと楽しくできると思います。
取材を終えて…
元観光庁長官ということで、滅多にお会いできないような方にインタビューをさせていただくのは非常に不安と緊張でした。ですが、日本の観光の歴史を変えた出来事をたくさんお聞きすることができ緊張を忘れるくらい驚きました。
神奈川大学 4年生 春田菜々美