第1回 TRANSIT TALK 開催レポート ~乗り換えるのは、電車だけじゃない。~
開催概要
開催日時:2026年9月10日(木) 18:30~20:00
会場:POSTUDIO at ニュウマン高輪
ゲスト:最明 仁氏 (日本観光振興協会 理事長/元JR東日本)
共催:JR東日本横浜事業本部CX戦略ユニット、一般社団法人ツーリストシップ

TRANSIT TALKとは
「トランジット」には、「乗り換える」という意味があります。
TRANSIT TALKは、JR東日本の新たなシンボルとなるTAKANAWA GATEWAY CITYを舞台に、さまざまなゲストとの対話を通じて、新たな考え方や価値観に出会い、自分自身の視点も「乗り換えていく」場です。
お話を聞くだけではなく、参加者の皆さまとともに、旅・鉄道・地域の未来について考え、新たなアイデアやつながりが生まれる場にしたい。そんな思いから、POSTUDIOを「知の乗り換え拠点」として、シリーズ第1回となるTRANSIT TALKを開催しました。
当日は、一方的に話を聞く講演会ではなく、ゲストと参加者の皆さまがともに考え、語り合える場を目指し、終始リラックスした雰囲気のなかで進行しました。
オープニング: なぜJR東日本とツーリストシップなのか
冒頭では、ツーリストシップのアンバサダーでもある、JR東日本横浜事業本部CX戦略ユニットの高堂氏が登場。旅行業に従事した経験も踏まえ、「旅は、世の中を良くするための大事なツールだと思っている」と、旅に対する思いを語りました。
ツーリストシップとは、スポーツマンシップのように、旅行者にも「旅の作法」があるのではないか、という考え方です。旅先の暮らしに配慮し、貢献しながら、交流を楽しむ姿勢や行動を指します。
出会いは「旅先クイズ会」から
続いて、当法人とJR東日本との連携が始まったきっかけをご紹介しました。
始まりは、和光大学の先生からいただいた「ゼミの学生とともに、横浜エリアで旅先クイズ会を開催したい」というお問い合わせでした。そのご相談をきっかけに、JR東日本の高堂氏との出会いにつながり、桜木町駅にて、和光大学・JR東日本・当法人の3者による旅先クイズ会が実現しました。
その後、JR東日本と旅先クイズ会のライセンス契約を締結。クイズ会の仕組みやノウハウを活用し、JR東日本が主体となって運営・開催する形へと発展しています。鎌倉駅では今年5月に開催され、10月25日には第2回の開催も予定されています。
高堂氏は、ツーリストシップを初めて知ったときのことを「ツーリストシップという言葉がすっと心に入ってきた」と振り返りました。また、人事の仕事に携わった経験から、社員一人ひとりの仕事の質を高め、社会に貢献したいという自身の思いとの重なりを感じたといいます。
駅は、電車を降りる場所であると同時に、地域と出会う入り口でもあります。駅を起点に、旅する人の行動を少しでも変えていきたい、という今後への思いも語られました。

会場・POSTUDIOのご紹介
続いて、会場であるPOSTUDIOを運営する日本郵政のご担当者から、施設についてご紹介いただきました。
POSTUDIOは、日本各地の魅力を発信する場として、大型画面を活用した映像や、実際に体験できるコンテンツなどを通じて、思い思いの時間を楽しめる空間です。
https://www.postudio.japanpost.jp/
ゲストトーク:最明氏を迎えて
第1回のゲストは、公益社団法人 日本観光振興協会 理事長の最明 仁氏。
1963年横浜市生まれ。1985年に日本国有鉄道に入社し、JR東日本では主に鉄道営業、旅行業、観光事業に携わってこられました。海外事務所や支社、国際事業本部長などを歴任し、2023年から現職。鉄道友の会の副会長を務めるほか、元JR東日本交響楽団団長で、現在もヴィオラの演奏を続けています。
鉄道の現場とともに歩んだキャリア
トークは、最明氏ご自身の思い出の写真を振り返りながらスタートしました。
国鉄時代の車両をはじめ、バスや電車にまつわる貴重な写真とともに、鉄道・バスへの深い愛着や、これまで仕事と趣味の両面から関わってきた歩みが紹介され、会場は和やかな雰囲気に包まれました。
鉄道と観光は、もともと一体だった
JR東日本を退職後、現在は観光分野で活動されている最明氏。鉄道の仕事に長く携わってきたからこそ、鉄道と観光の深いつながりを感じていると語りました。
歴史を振り返ると、日本でも海外でも、鉄道の発展と観光には深い関係があります。鉄道が開業した頃から、その経営を成り立たせるうえで観光は重要な存在であり、現在ご自身が携わっている観光の仕事も、その延長線上にあると話しました。
ツーリストシップとの出会い、そして観光のこれから
最明氏がツーリストシップを知ったのは約2年前。沖縄で開催されたコンベンションビューローの周年事業で、当法人代表・田中の基調講演を聞いたことがきっかけでした。
現在、日本観光振興協会と当法人は連携しており、DMO(観光地域づくり法人)の情報サイト「DMOナビ」からも、ツーリストシップのページをご覧いただけるようになっています。
観光振興では、これまでプロモーションや情報発信に重点が置かれてきた一方、鎌倉をはじめとする一部の地域では、観光客の増加に伴い、住民の暮らしへの影響が課題となっています。
最明氏は、一定のルールづくりや受け入れ側によるコントロールも必要としたうえで、旅行者にも地域のルールや暮らしを尊重してもらい、地域と旅行者との間に自然な交流が生まれるような関係づくりが大切だと語りました。
そのためには、地域の観光を担うDMOが「住民の側に立って」仕事をするスチュワードシップの考え方と、訪れる旅行者に向けたツーリストシップの考え方を「両輪」として、ともに進めていくことが重要だといいます。
日本が訪日客6,000万人・消費額15兆円という目標を掲げるなかで、地域に暮らす人、地域の事業者、そして旅行者のそれぞれにとって、より良い観光のあり方をつくっていきたいという思いが語られました。
これを受けて高堂氏は、「『また来たい』『また来てね』という両思いの関係を丁寧につくっていくことが大切」とコメント。ツーリストシップについても、迎える側と旅行者の双方が100%を求めるのではなく、お互いに少しずつ気を配り合う考え方ではないか、と話しました。

トークセッション: 駅は「目的地」になった
後半はさらに視野を広げ、駅・地域・観光のこれからについての対話が展開されました。
かつての駅は、電車に乗るための場所という側面が中心でした。しかし現在では、駅で仕事をしたり、買い物や食事を楽しんだりと、駅そのものが日々の生活の一部になっています。
最明氏は、こうした変化について、JR東日本発足後の大きな変化の一つではないかと語りました。
高輪ゲートウェイは、浜松町から品川・大井町へと広がる広域品川圏の中核として、多様な交流と新たな価値創造を生み出すエリアです。
歩行者デッキによってまちがつながり、これまで線路によって分断されていたエリアも、反対側のコミュニティと一体的になっていくと最明氏は話します。
さらに、今後の交通ネットワークの広がりにも触れ、品川が新たな交通の結節点になっていくことについて、JR東日本OBの立場からも「ワクワクする」と期待を寄せました。会場では、「今日初めて高輪ゲートウェイに来た」という参加者からも、「ここは目的地なんだと実感した」という感想が寄せられました
参加者からの質問
事前に寄せられた質問や、当日会場から挙がった質問にも、最明氏にお答えいただきました。ここでは、その一部をご紹介します。
Q. 川崎にツーリストシップを広めたい。川崎は「観光地ではない」と言われますが…
川崎大師をはじめ、音楽のまちを象徴するミューザ川崎、藤子・F・不二雄ミュージアム、工場夜景など、川崎にはさまざまな魅力があります。
街を散策するだけでも新たな発見があり、「観光エリアではない」という発想そのものを変えていく面白さがあると最明氏。質問者からも、「サイトシーイングではなく、サイトルッキング(じっくり見る)」という視点が共有されました。
Q. 再生型観光(リジェネラティブ・ツーリズム)は東日本にも広がる?
旅行者が訪れることで、地域がより元気になり、再生していく。そうした考え方の事例として、京都・京北における里山の維持や、瀬戸内国際芸術祭、新潟の大地の芸術祭などが紹介されました。
また、東日本では福島・浜通りのホープツーリズムなども、地域との関係を深めながら再生を目指す取り組みの一つとして挙げられました。普及に向けては、まず地域の人と旅行者が「知り合い」になることから始め、地域ごとの特色を生かした関係をどのようにつくっていくか、という視点も示されました。
Q. 駅ごと・沿線ごとの企画やまちづくりに、未来はある?
最明氏は、会社や駅という垣根を越えて、地域とともに取り組めることが増えていることへの期待を語りました。
また、会場に参加していた現役の駅長からも、周辺の鉄道事業者や自治体、観光協会などと密接に連携しながら取り組んでいる様子が共有されました。

Q. 東北の観光、スタートアップとの連携について
福島・浜通りや三陸などでは、新たに地域に入った人々が、さまざまなチャレンジを始めています。最明氏は、そうした動きに関わりながら提案を重ね、魅力的な事業を生み出していきたいと語りました。
会場にはJR東日本スタートアップの社員も来場し、地域に根ざして事業を行うローカルスタートアップへの資金面でのサポートや、首都圏の人材と東北地域の人手不足という課題をつなぐ取り組みなどが紹介されました。
Q. GREEN EXPO(横浜)の機運醸成に向けて
横浜市民が納める「みどり税」や、市民の森、都市農業など、横浜には豊かな自然環境が残されています。最明氏は、GREEN EXPOについて、横浜が自然環境を大切にしている地域であることを世界に発信する機会であり、市民の皆さまにも身近な取り組みとして知ってもらうことが大切だと語りました。
Q. 地域と旅行者の良好な関係が築けているケースは?
アートを通じて地域の人と来訪者との間に会話が生まれ、関係人口(交流人口)が育っている事例として、新潟・越後妻有(十日町)や瀬戸内国際芸術祭のエリア、静岡・熱海などが紹介されました。長野でも、移住者が地域に入り、コンテンツづくりが進むことで、一度きりの訪問ではなく、「何度も通いたくなる関係」が育まれているといいます。
最明氏にとっての「トランジットトーク」
トークの最後には、「あなたにとってのTRANSIT TALKとは?」という問いを投げかけました。
最明氏は、若い頃、周囲からの期待に応えようとしたり、優秀な同僚に追いつこうと背伸びを重ねたりするなかで、バランスを崩した時期があったと振り返りました。
その後、ありのままの自分の考えを素直に発信するようになったことで、周囲とのコミュニケーションがよりスムーズになり、肩の力が抜け、自分自身も大きく変わることができたといいます。
「相手の立場を思いやることは大前提ですが、自分の考えは素直に伝えることで、いろいろなことが変わるのではないでしょうか」
同僚や先輩、上司など、身近な人との間でも、自分の思いを素直に伝えてみること。それが、自分自身の視点を「乗り換える」きっかけになるのではないか――。
TRANSIT TALKという名前にもつながるメッセージとともに、第1回のトークは締めくくられました。

第1回目を終えて
記念すべき第1回のTRANSIT TALKには、多くの皆さまにお申し込みいただき、満員での開催となりました。鉄道、観光、地域づくりなど、それぞれ異なる立場や関心を持つ皆さまが一つの場所に集まり、ゲストのお話を聞くだけではなく、ともに考え、言葉を交わす時間となりました。TRANSIT TALKが目指すのは、正解を一方的にお伝えする場ではありません。さまざまな人との対話を通じて、これまでとは少し違った視点に出会い、自分自身の考え方を「乗り換える」きっかけが生まれる場です。ご登壇いただいた最明氏をはじめ、ご参加いただいた皆さま、そして開催にあたりご協力いただいた皆さまに、改めて心より御礼申し上げます。
第2回目のお知らせ!
第2回 TRANSIT TALKは、11月12日(木)18:30より、引き続きPOSTUDIOにて開催予定です。
第1回で生まれた対話を次へとつなぎ、新たなゲストをお迎えして、旅・鉄道・地域の未来についてさらに考えていきます。 第1回は満員となり、お申し込みを締め切らせていただきました。第2回の詳細については、後日掲載予定のお知らせをご覧くださいませ!またまたビッグなゲストです!!!


