Vol.001 ツーリストシップの道しるべ ~年間計画いよいよ決まる~

十数メートルもあろうかという高い飛び込み台を経験したことはないが、市民プール程度なら立ったことがある。単なる錯覚かどうかは分からないが、下から見上げるよりも、実際に立った方が高く感じる。好奇心に任せて登り、いざ見下ろした時の高揚感と後悔が交差する複雑な感情は、今思い出すだけでも胸が締め付けられる。

ツーリストシップが、「飛ぼう」としている。

田中代表に今年の目標を聞いた。旅行者、観光地、住民との「三方善し」を目指し、もしかしたら独自の感性で突き動かしてきた。例えばブレスレットに思いを馳せ、呼ばれればどこへでも足を運んだ。しかし今年は、意図をもって、具体的に目指す一里塚を設定した。だからだろうか、彼女の声色が、その目線が、すっと前を向いた気がした。

例えば飛び込み台に立った時、足がすくむのは下を見るからだ。そして高く感じるその落差に人は慄(おのの)く。やめておこうかと、心がざわつく。「落差」に焦点が向くからだ。

彼女の決意に満ちた高揚感は、心のざわつく介入を許さない。ただ静かに、そして熱く、前を見る。私にしかできないジャンプが、その高台から、やがて叶う時が来る。その最初の凛とした姿が、電話越しに感じられた。前を向くその目線に「落差」の悲壮感はない。あるのはその先にある希望だ。だからツーリストシップは、「飛ぼう」としている。

今年はたくさんの旅行者と会う。そして、旅行者が何を考えているのか、何を思っているのか、ただ懸命に、一途に、耳を傾ける。まずはこの実直でリアルな「地場」に目を向けた。大きなツーリストシップのうねりは、一人ひとりから生まれていく。そのリアリティに向き合う2023年を、イメージしている。

体験型にもこだわる。旅行者が喜ぶこと、例えばスポーツで汗を流すことも、ツーリストシップに通じるだけでなく、その場でしか経験できない価値であると捉えた。そこから生まれるコミュニティは、たくさんの価値を育むに違いない。前を向いたその瞳に、迷いはない。

ツーリストシップが、「飛ぼう」としている。

飛び込み台が怖い? それがどうしたと、言わんばかりに。

ツーリストシップ研究所 所長