Vol.006 ツーリストシップ行動指針「HARF」について

人間という生き物は奇妙なもので、「やってはいけない」と言われると、やりたくなる特性を持っている。

それは、年末恒例となった「笑ってはいけない」番組で、出演者が事あるごとに「笑い出す」あの有様を少しでも見たことのある方なら、想像は容易いだろう。ただあの番組は、無理やり笑わそうとしているので少し意味は異なるが、「してはいけないこと」に対して人間は、そのように「やってしまう」生き物なのかもしれない。

ツーリストシップが掲げる『具体的な行動指針』として、「HARF」というものがある。これは、鍵カッコも含んでの、それぞれの頭文字。Lという文字を回転させ、鍵カッコとして表現した、何ともシュールな行動規範だ。

旅行前に調べること、旅行中は元気な挨拶をすること、聞くこと、読むこと、守ること、そして旅の後、そこで体験したことを「活かす」こと。この6つになる。

様々ある標語は、良くも悪くも抽象度が高い。そこを田中代表は、わかりやすい形で、あえて「こうだ」と具体化した。賛否あるだろうが、この辺りはツーリストシップの普及を考えた、田中代表の愛情ともとれる気がする。

特にこの6つに優先順位があるわけではない。しかし田中代表が特に声を大きくしたのが、「元気な挨拶」だった。

スポーツでも社員教育でも、挨拶が大事だと、聞かない時がない。それくらいもはや、どこでも言われている標語に、あえてツーリストシップは「その意味」を説明する。

挨拶をする意味、それは、挨拶によって旅行中での恐怖心を取り払うことができるのだと。挨拶がないと、その人が何を考えているのか、どういう人なのかさえ入ってこない。恐怖心が先行すると、自己防御のために関係性が悪くなる。この悪循環は、「元気な挨拶」から取り除くことができる。だから、挨拶は大事なんだよという説明だった。

しなければならないことには、理由がある。その理由が、旅をする私にとって価値があり、意味がある。だから私たちは、そのことを行動に移す。「やってはいけない」ことを「やってしまう」くらいの、人間の厄介な特性である。理由なしで「やりなさい」を、素直に従うほど、人間は素直じゃない。だから「笑ってしまう」のかもしれない。

ゴミを捨てるなと言われても、「捨ててしまう」のが人間である。それくらい、他人から言われて実行することを嫌う。しかしそこに、私にとっての意味があれば、私事(わたくしごと)としての理由があれば、話は別だろう。そんな人間のメカニズムを田中代表は計算して「元気な挨拶」を掲げたのだろうか。わかりやすさは、わかりやすい意味とセットであることで行動が生まれる。その行動に影響力が生まれる。やがて、ツーリストシップが広がり出す。そのことに気づいた瞬間だった。

「HARF」という標語は、優しい意味だからこそ、深い意図を持っている。この言葉が修学旅行生や様々な方々に広がり、意味と共に深化拡大していくことを、願わずにはいられない。

しかしこの「HARF」というネーミング、何とも美味しそうというか、爽快感というか、清潔感漂う透き通った香りがこちらまで届いてきそうな、そんなオーラを感じる。

って、それはハーブやないかい! …ダダーん。たなか、アウト。

ライター 弓指利武

サウンド 井本ゆうこ