【理事取材特集 古野理事 インタビュー】

古野 浩樹

一般社団法人ツーリストシップ

京都生まれ。同志社大学文学部英文学科卒業。1984年㈱日本交通公社(現㈱JTB)に入社。団体旅行営業職に13年従事後、管理職として団体旅行商品造成個所や営業本部の課長、インバウンド部門長や法人営業の支店長などを務める。2014年からJTB本社役員として法人事業と観光戦略推進責任者。2020年4月から㈱JTBコミュニケーションデザイン社長。

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古野理事から一言

現場で得る「声とデータ」が当法人の強みなのではないですかね。

 JTBグループに40年近く勤めて得た、観光関連の知識や観光従事者の皆様とのご縁、そして地方創生に関する知見が私の強みです。

元々、大学時代は体育会卓球部でインカレ3位のチームで副将をしていまして、その道で就職する予定でしたが、破談となり、慌てて始めた就活で最初に内定をくれたのが日本交通公社でした。それまで海外旅行経験もなく、乗り物酔いする私が、いつのまにか添乗や事業推進で国内海外を何百回と飛び回るような生活を送ってきたのも、不思議な巡り合わせです。中国での事業会社づくりをしていた中国事業推進室の次長時代は、パスポートに1年間に中国入国のハンコが23個押してあり、我がことながら驚いた記憶があります。

社員生活を通してみると、主にJTBの法人事業戦略推進に取り組みましたが、6年間の本社役員の期間は、その法人事業の中長期戦略を描くこととあわせて、全国47都道府県のJTBの支店が、その所在する地域の関係人口や交流人口を増やすためのコンサルティングやプロモーション、更には具体的な施策を行う「地域交流事業」の推進体制づくりに力を注ぎました。旅行とは個人団体を問わず、何かしらの大事な「目的」を達成するための「手段」であるわけで、旅行業とは、いわばお客様のその課題解決に資する旅行の提案と提供をする課題解決業なんですが、この地域交流事業とは、着地である地域の皆さんと共に、その地域の魅力の発掘、磨き上げ、発信、そして集客、施策を実施する、JTBのもう一つの本業という位置づけなんです。もちろん今の時代、情報発信も収集も、施策の実施も、デジタルとデータの活用は欠かせませんから、私の地域交流事業関連の講演の機会では、IoTの話に終始しましたね。

ツーリストシップ(その当時はもちろんこの言葉に出会っていませんが)のことで思い起こすと、岐阜県高山市の事例を何度か話したのがそうだったのかなと、今になって思います。高山市は欧米豪からのインバウンド誘致で成功をしています。欧米人が興味を持つ観光素材、ルートがあることに加え、とにかく行政の取り組み開始が早かったこと、継続的であること、マーケティングのリーダーがおられたこと、その結果市民が外国人に対して、「快適に気持ちよく高山の暮らしを感じてほしい」と心から思い、住民やお店の方が様々なサービスを自主的に実施されていることなどに、成功のポイントがあると思います。これはまさに「観光地側のツーリストシップ」の話です!この「観光地側のツーリストシップ」の実現には、地域愛の醸成と共に、「観光ROI」を地域住民に示したり、観光客が来てくれることでの経済的・社会的価値などをしっかり地域で理解してもらうことが必要だと思いますね。私見ですが、当法人がツーリストシップの概念を広げるためのアプローチとしては、こちらが先の方がうまくいくのではないかと思うことさえあります。

いずれにしても、当法人の皆さんの活動によって得られたデータやファクトを強みにして、「地域とツーリストは共にこう考え、こう行動すれば、こんないいことが生まれる」ということを語り続けることが肝要ではないですね。微力ながらお役に立てるよう頑張ります!

取材を終えて…

長年旅行業界で、ビジネスとして酸いも甘いも経験していらっしゃる方からお話を聞くことができ、とても面白い経験でした。「旅行を手段」と言い切るなど、意外な見方をしていらっしゃるんだなと感じることが多くありました。

神奈川大学 4年生 春田菜々美

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