【理事取材特集⑤】沢登理事 インタビュー
沢登 次彦
1993年株式会社リクルートに入社。教育広報事業部を経て2002年に旅行事業に異動。主に関東近郊観光地の地域活性に携わり2007年から現在までじゃらんリサーチセンター長、とーりまかし編集長を務める。(写真右、左は息子)
沢登理事からの一言
訪れる側と迎える側が互いに挨拶を交わし、良い関係を築こう
現在は仕事でも旅行事業に携わっていますが、コロナ前は仕事とプライベート合わせて年20回は旅行をしていました。近場もあれば沖縄や北海道まで行き、旅行先ではのんびり過ごすこともあれば妻とゴルフをしたり、3世代で温泉旅行に行くこともあります。
30年前にリクルートに入社して教育機関広報事業部でBtoBの仕事をしていました。教育系の仕事をしていく中でBtoCいわゆるカスタマーの反応をダイレクトに感じられる領域で貢献感を実感したいと思うようになりました。自分にとって実感値を発揮できる領域が「旅行」でした。元々年に1回は家族旅行をしている家庭で生まれ育ち、旅行が人生の中で当たり前になっていたからだと思います。
旅行事業に異動してからは地域活性に携わってきました。特にやりがいを感じたのは今でこそ若者に人気のある熱海の地域活性です。熱海はもともと団体旅行をターゲットとしていた観光地だったので、個人旅行が定番化になりつつある社会の中で苦しい時代がありました。行政の担当者の方と話し合いを重ね、現地に足を運んだことで熱海の価値を高めていきたいと思いました。しかし、地域住民や行政の合意形成を図っていくためには「データによる価値の見える化」をしなければならないということに気付きました。そこで、「ギャップ調査」を設計しました。認知度は低いが、興味度は高い資源に可能性があるということを示したかったんです。例えば、熱海の「人口ビーチ」です。「人口」なので地域住民はあまり良く思っていませんでした。しかし、実際には生活排水が流れていないので水が非常に綺麗だということ、禁煙ビーチであり、サーフィンも禁止されています。このような点をまとめていくと「小さな子供にとっては安心して遊べるビーチであり、まさに海デビューにぴったりではないか?」という仮説が立てられたわけです。ファミリーを新しいターゲット層にし、約1年かけて観光事業者や行政の方々と関係を築き、熱海を活性化していくことに非常にやりがいを感じました。
自分もプライベートで旅行する中で「最初の出会いの時に笑顔でコミュニケーションをすること」を意識しています。ツーリストシップにも「挨拶」が項目で挙げられていますね。旅行者だけではなく、迎える側にとっても挨拶をすることが大切ではないでしょうか。お互いがリスペクトし合うことで価値ある時間を提供し、旅行の価値が高まっていくといいなと思います。また、ツーリストシップが広まることで旅の満足度や魅力度が上がると思います。
旅行が人にもたらす価値は2つあると考えています。1つ目は「リフレッシュ・リセット」2つ目が「刺激を受ける・新しい可能性を感じる」というものがあると思います。旅先で出会った人との交流によって深い感動や共感が生まれ、自分の内面にも変化が起こる可能性を秘めているかもしれません。日本には2つ目の部分があまり定着していないようにも思えます。また、地域への愛着が低いということも現在取り組んでいる課題です。将来的にはご当地教育によって1年に1回以上旅行をしている人の割合をコロナ前より増加させたり、地域の働き手不足問題の解消を目指しています。
取材を終えて…
直接的に旅行事業に関わっている方からお話を伺うことができ、地域活性についての取り組みは非常に面白いなと思いました。また、旅行者だけではなく迎える側にもツーリストシップを発揮する必要があるということが大事だということを学ぶことができました。
神奈川大学 4年生 春田菜々美