Vol.38 温泉につかりながら、ツーリストシップを想う時
今日は珍しく、鹿児島は指宿にある山川港を望みながら書いている。皆さんにとっては「だから何なんだ」という話だろうが、言うなれば「なんちゃって」出張版活動コラムである。先週、田中代表からヒアリングした内容を反芻しながら、温泉帰りの客を横目に、フロントのフリースペースでキーボードを叩く。
食と文化と歴史に事欠かない鹿児島の醍醐味を、コラムで表すのはあまり得意ではないが、普段と異なる場所で書くと、文字の質感や出力される表現具合は多少変わるかもしれない。そういうことくらいは何となくであるが書ける。山川港と言えば16世紀、西欧諸国で初めて紹介された日本の場所と言われているし、鎖国の中で琉球王国との貿易窓口にもなっていた。外へ外へと向かうには、何かと便利な港だったわけである。
ツーリストシップもまた、外へ外へと向いている。日本の旅行に留まらず、海外展開を視野に入れている。田中代表が最近参加した起業家向け合宿でも持論を展開し、そこで得た結論の一つとして、田中代表は自信を得た。今までやってきたことは間違いじゃなかったという自信だった。でももっともっとすごい人はいる。その向上心に灯が付いた。こういう体験を繰り返しながら、田中代表は成長を止めない。
成長を目的にしているわけではなく、ありたい理想からの逆算だ。そういうわけで、もっと熱く、もっと雄々しさを醸し出す文体に仕上げたいのだが、何といっても今日は指宿温泉である。頬を赤く染めた今の私に、そんな覇気は浴場に捨ててきたのである。
だが、同時にふと思うのである。旅というものを通じて田中代表が成し遂げたいビジョンは、もしかするとこういう私のような旅行客を増やすことなのかもしれない。ツーリストシップを広げること、活気づけること、理解してもらうこと、その一つひとつには、安寧な旅を通じた「あー、生きててよかったなあ」という、ほっとしたため息吐息をどれだけ出せる旅にするかである。旅の種類もいろいろではあるが、どうあれ、行ってよかった、出会えてよかったを世界中に広げることが田中代表のミッションなはずである。そう思えば、今こうしてロビーでキーボードを叩いているこの私こそが、ツーリストシップを生きているのだった。
明日の朝食は何時にしますかと、まさに今スタッフさんに尋ねられた。どうしよっかな。海辺の散歩してからだと8時かな、いや最近は朝お腹すくから7時にしようかな。そんなことをぐるぐると考えながら、夜も更けた山川港に目をやる。灯台が小さく灯り、人気のない海を照らす。ここがまさに貿易としての、海外との玄関口だったとは信じがたい静けさである。
ツーリストシップの拡張は、今のこの安寧の旅をビジョンとすることで駆動する。田中代表の起業家向け合宿はまだ終わっておらず、課題発表を残しているらしい。そんな苦行も厭わぬ田中代表を尻目に、ところで私は、先人たちが抱き続けた「外へ外へ」の飽くなきツーリストシップ魂を感じながら、今宵3度目の温泉に浸かることにしよう。では、失敬。