【理事取材特集④】髙井典子理事 インタビュー

髙井典子

一般社団法人ツーリストシップ 理事

大阪府で生まれ同志社大学法学部卒業後、三井物産株式会社に入社。日本の観光を変えたいという思いと旅に関わる仕事に興味を持ち、渡英。イギリスの大学院で国際観光を学び、教育の世界へ。2020年からは神奈川大学国際日本学部教授を務める。

Profile Picture

髙井理事からの一言

旅先にギフトを残していく観光客を育てたい

 現在は観光を専門に研究をしていますが、そもそも私が「観光」の世界に入った原体験は幼い頃から旅に対して憧れを抱いていたことから始まります。日曜の朝放送の「世界の子供たち」をよく見ていました。世界の子供たちの家や食べ物、学校の風景などを見て世界というものに興味を持ちました。同時に年1回夏休みに2泊3日家族で旅行に行っていたことも大きく影響しています。当時私にとっての旅行はまさに自分と世界を繋ぐためのものでした。

 大学4年生の時に卒業旅行として幼なじみと初めて海外旅行に行きました。行き先はオーストラリアとニュージーランドで約1か月間バックパッカーとして旅しました。宿泊先はホームステイとファームステイがメインでまさに「世界の子供たち」の影響で現地の人の暮らしに興味を持っていたんです。人を通して生活を見ることで思い出に残る海外旅行になりました。

 大学卒業後は旅行会社も選択肢にありつつも、総合商社である三井物産に入社しました。しかし、仕事をしていく中でやはり自分は旅に関わる仕事がしたいという思いがあったこと、そして何よりも当時の日本はインバウンドも少なくこんな素晴らしい観光資源を活かさないってもったいないなと思ったんです。仕事を退職しイギリスに渡り大学院で観光について学びました。卒業後はご縁もあり教育の世界に入ることとなりました。

 現在大学教員として「日本の観光を変革する人間を育てる」ということに最も力を入れております。その一方で、観光人材を観光業界に輩出するためだけに教えているわけではない面もあります。一番大切なのは学生1人1人が自分らしく、かけがえのない人生を生きていけるための何か気づきを得る4年間にしてほしいということです。

 日本の観光を変革する人を育てる上で、いわゆる観光人材(財)だけではなく、「良い観光客を育てる」ということを大事にしていますね。観光を学んでも観光業界に就職するとは限りませんが、皆いつかどこかで観光客になる場面がありますよね。もちろん観光客として旅を楽しみながらも訪問先への敬意や感謝の気持ちを態度や振る舞いであらわせるような観光客になってほしいと思っています。

まさにツーリストシップに繋がりますね。私は実際に旅行をする時に「現地の人と話をすること」を意識しています。もちろん無理やりは良くないですが、地元の方が嬉しそうに地域のことを話してくれる場面に出会えるとき、その旅は私にとってかけがえのないものになるんですね。ほんの一瞬の短い出会い=Brief encounterが一生の思い出に残ることがあるんです。マレーシアの離島を朝散歩していたときに出会って、おうちでご飯をご馳走してくれたおじさんのことは30年経った今でも鮮明に覚えています。

 最後に、ツーリストシップに絶対的な正しさはないと思っています。オセロで全部白や黒になることがないように、全員が同じにはならないということを知っておく必要があるのではないでしょうか。「スポーツマンシップ」という言葉があるということは「スポーツマンシップ」を発揮していない人もいるということにもなりますよね。しかし、中には様々な事情で発揮できない人もいます。「全員が発揮するべき」と正義を振りかざすことなく、出来ない人や場面もあり得るということを知った上で「ツーリストシップ」が常用語になっていくと良いですね。

取材を終えて…

普段大学でコミュニケーションを取っている方にインタビューをするということで不思議な感覚でした。髙井理事の今までのご経験や大切にされている考え、特に最後のツーリストシップという言葉に対してのご意見は心に留めておくべきだなと気付くことができました。

神奈川大学 4年生 春田菜々美

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA