Vol.019 奇跡は生み出すもの。「…あっ」という出逢いに魅了され。
カッコよく言えば、マーケティングという話になる。
ちょっとした流行りの言い方を添えれば、マッチング、とでも言うべきか。
「出逢う」ことの価値と難しさについてが、今回のテーマになった。
昨今、様々なマーケティングリサーチの手法が世の中を席巻し、ノウハウ本はそれこそ枚挙に暇(いとま)がない。
より効率的に、そして効果の出せるローコストでのマッチングは、商売をする上で必需品である。
ストーリー戦略、カスタマージャーニー、それこそ多様なフレームワークは、私たちの頭脳と心を揺さぶっていく。
一方で、意図しない、狙わない出逢いというものへの価値も、日に日に上がっている。
舞台は変わり夕暮れの図書室。ふと気になった本に手を伸ばすと、隣から同じタイミングで伸びてくる手が。
そして二人同時に、声が出る。引っ込める手と同時に、互いの目線が交差する。
「…あっ」
いかんいかん。そんなベタな恋愛ストーリーを語りたいわけじゃない。
でも、こういう不意の出逢いは感動を膨らませる。
Vol.016で書いた「セレンディピティ」に着想が近い。
「旅行者が嫌われない世の中にしたい」
そんな想いを持った方に、田中代表は出逢うことができた。
しかも、人づてに紹介された奇跡のリレーによるものだった。
出逢いはどこで始まるか分からない、
まるで「決められていた」かのような錯覚を起こすものほど、その奇跡の偶発性は驚異的なレベルになっていく。旅行が好きで、旅行を愛し、これからも楽しい旅行が続けられる社会にしたいという想いが、田中代表とをつないだ。
しかし奇跡とは偶然ではなく、生み出すものなのかもしれない。偶然に身を寄せたとて、人生はそんなに長くはない。キャリア論の巨匠、クルンボルツ博士が提唱した『計画された偶発性理論』でさえも、偶然の出逢いには5つの要素が不可欠だと説いた。好奇心や冒険心、楽観性や持続性そして、柔軟性が必要であると。
図書室での運命のような出逢いも、マンザラではない。好奇心を持って本を読もうと図書室に足を運んだこと、そして興味のある本が目に留まり、迷うことなく手を伸ばした冒険心、そしてそして何より、これは私の妄想が大半を占めるが「あわよくばいい出会いが欲しい」と潜在的に願い続けていたからこその、「…あっ」ではなかったのかと。
「でね、10月9日の4周年、もうはっちゃけた感じで、野球大会とかどうかなあって。ははは」
田中代表はもう違う話をしていた。「…あっ」さえも言わせない速度観。好奇心が拍車をかけ、まずやってみるが先に立つ世界。楽しくなければ続かない。出てくるアイデアの蛇口を締めるな。ツーリストシップの心意気が、『旅行者が嫌われない世の中』を創り出していく。クルンボルツ博士も真っ青の、偶発性理論を地で行く人である。「…あっ」なんて、そんなマドロッコシイことなんか、言わせない。
「じゃあ、10月9日のレクリレーション大会、弓指さん考えてくれません?」
…あっ?